可能性無限大!日本料理とドイツワイン

「日本料理にドイツワインがビックリするほどよく合う。」これまで数々の料理とお酒のペアリングを研究してきたワイン担当からそんな情報を聞きつけたオンライン店スタッフ松丸。日本料理にドイツワインが?絶賛するほどの相性の良さとは?これは実際に試してみるしかない!と「日本料理とドイツワインを合わせる会」に参加してきました。

集まったのは、ドイツワインのインポーター・ヘレンベルガーホーフの宮本さんと、はせがわ酒店ワイン担当2名、そして日本酒のほかワインにも興味津々のスタッフ有志5名。鰹や鯵のお刺身にとうもろこしや茄子の天ぷらなど夏の食材を使った日本料理と、宮本さんイチオシのドイツワイン、スパークリング2種に白4種、赤と甘口白ワイン1種ずつの計8本を合わせていきます。すると…夏の日本料理とドイツワインの素晴らしい相性が次々と生まれたので、皆さまにもお伝えいたします!!

まずはドイツとドイツワインについて

ブドウ栽培の北限ともいえるドイツでは、少ない日差しでブドウを完熟させなければなりません。そのため、最良の畑は機械が入れないほどの急斜面で、石の多い南向きの斜面に築かれています。これは地熱と日照を最大限に活かすため。ドイツではフランスやイタリアなどのヨーロッパの他の地域よりもブドウを完熟させることが難しかったからこそ、糖度の高いブドウが高い評価を得ていました。

その気風も相まって昔は「ドイツワインといえば甘口」というイメージがありましたが、1980年代以降若手生産者の品質重視の生産者のテロワール回帰の機運が高まり、辛口ワインが増加。いまでは全生産量の65%を辛口と中辛口ワインが占めています。

そしてドイツワインの代表的な品種といえば、白ブドウのリースリング。ドイツは世界のリースリングの栽培面積の6割を誇るリースリング大国。辛口から甘口、スパークリングまで幅広いスタイルのワインが造られており、類稀なる芳香性とその土地の味わいを映し出す鏡のような敏感さはワイン愛好家の心をつかんで離しません。

さらに近年生産量が増えているのが、黒ブドウのシュペートブルグンダー(=ピノ・ノワール)。その品質は、マスターオブワインのジャンシス・ロビンソン氏が「ブルゴーニュの後を追って価格が手の届かない成層圏に突入する前に、ドイツのピノ・ノワールを今すぐ買うべき」と言うほど。年々その評価が高まり、注目度も上がっているのです。

夏の日本料理と合わせてみた!

 

テーブルには塩茹で枝豆にお刺身(鯵、鰹、イサキ、コチ、鱧、鳥貝)、夏食材の天ぷら(とうもろこし、茄子、インゲン、鱧、岡わかめ、どんこ、ピーマン、ニンニクの芽)、鮎の塩焼き、サザエ壷焼き、蛸と生姜の炊き込みご飯、フルーツ(マンゴー、さくらんぼ、枇杷、スイカ)と夏の食材を使ったご馳走がズラリ。

料理を食べつつワインを飲み、相性の良い組み合わせをメモしながらも宮本さんが用意してくださった動画や画像、現地の土壌の石を見てワインや生産者の情報を聞き、そしてまた食べまた飲んで…という嬉しい忙しさの勉強会の始まりです。

―― 実はドイツには「乾杯!」の言い方がいくつかありまして、ビールの時には「Prost!(プロ―スト)」、ワインの時には「Zum wuhl!(ツンヴォール)」と言います。 「Zum wuhl!(ツンヴォール)」は直訳すると「健康に乾杯」という意味。それでは皆さん、まずは泡から始めましょう。それでは全員で…(宮本)

―― ツンヴォール!(全員)

■ バッハラッハー・リースリング・ゼクト・ブリュット 2015 / ラッツェンベルガー

―― 「リースリングの魔術師」として名を馳せるラッツェンベルガーさん。そのこだわりは並大抵のものではありません。補糖には10年熟成したリースリングのアウスレーゼを使用し、瓶内二次発酵、そのうえ5年以上熟成させた珠玉の1本。ドイツのスパークリングは、シャンパーニュと比べると泡が柔らかく気圧が低めなのが特徴です。ラッツェンベルガーではスティルワイン造りのついでに泡を造るという感じなので、動瓶もすべて手作業。職人さんがものすごい速さで回していくので、見るとびっくりしますよ(笑)(宮本)

―― 動画で見たことありますがものすごい速さですよね!スペックと手間を考えると3,000円台でいいのかなと思っちゃいます。(金谷)

―― この泡と楽しみたいのはやっぱり天ぷらですよね。シュワシュワ感と天ぷらの油がマッチして、天ぷらのサクサクさが一層際立ちます。(石井)

―― とくにトウモロコシの天ぷらとラッツェンベルガーの泡は最高!トウモロコシの甘味が前面に出てきて、もっと食べたくなる幸せな組み合わせです。(松丸)

■ マルターディンガー・ビーネンベルグ・ヴァイサーブルグンダー 2019 / ベルンハルト・フーバー

―― こちらはミネラル感が強く樽熟成由来の柔らかさがありながらも酸もしっかりと残った、フーバーさんのこだわりが存分に感じられるハイレベルな白ワインです。(宮本)

―― 鱧や茄子の天ぷらにフーバーのヴァイサーブルグンダー、完璧に合うなぁ。旨味のある食材にピッタリ。酸もしっかりあるし旨味が広がるね。(安藤)

―― ワイン単体で飲むとミネラル感がしっかりきいた味わいですが、料理と合わせるとその印象はガラリと変わりますね!鯵やコチのお刺身ともピッタリ。特に鳥貝とはその食感と磯の香りがワインのミネラル&鉱物的な味わいによく合います。醤油の香りにも調和する、縁の下の力持ち的ワインだと思います。(松丸)

―― そう、ヴァイサーブルグンダーって醤油とも相性バッチリなんです!まさに和食にピッタリのワインですね。実はフーバーさん、日本からのお土産は何がいいか聞くと「醤油!」と答えるくらい日本好き。なので自分のワインが日本料理とよく合うと聞いたらとても喜ぶと思います。ちなみにラベルにうっすらと書いてある「H」は、弊社「ヘレンベルガーホーフ」のH。グラン・クリュの畑を借りて、ヴァイサーブルグンダー(=ピノ・ブラン)を使って造ってもらったオリジナルワインです。(宮本)

―― はせがわ酒店の「H」でもあるわね。やっとできたわ、弊社オリジナルワイン(笑)(吉澤)

■ マルターディンガー・シュペートブルグンダー 2018 / ベルンハルト・フーバー

―― 樹齢20年前後のシュペートブルグンダー(=ピノ・ノワール)のみを使用した、ワイナリーの看板ワインです。フーバーさんはブドウの剪定にもものすごいこだわりを持っていて、甘みと酸味をバランスよく残すために、毎年6月頃に房の真ん中辺りの実をくり抜くんです。ピノ・ノワールは熟すと実が詰まって病気になりやすいのですが、こうすることで風通しも良くなり、健全で甘みと酸味のバランスが取れた実が育つんですね。これを各畑ごと、どのくらいの実をくり抜けばいいか計算しているんですよ。(宮本)

―― それをすべて手作業でやるなんて、本当に果てしない作業ですね…(松丸)

―― ざっくり計算すると、250万房くらいを1か月以上かけてやるんです。すごいこだわりですよね。(宮本)

―― そんな努力を経てこのワインができていると思うと、より美味しく感じますね…。この赤ワインには意外にも、鰹の刺身がよく合います。ワインの丸みのある果実感と油分の少ない夏鰹の赤身がストレートに混ざり合いました。また、醤油とも相性◎。これは藁焼きにしてもよく合いそうです。(白沢)

■ ゼクト・ロゼ・ブリュット 2012 / ベルンハルト・フーバー

―― 瓶内二次発酵で6年以上の熟成。サーモンピンクの鮮やかな色調で、ピュアな果実味と洗練されつくしたエレガントなボディです。実はこれ、グラン・クリュのブドウを使用して造っているのですが、フーバーさんの求める味わいには達しなかったということで「グラン・クリュ」を名乗っていないんです。(宮本)

―― さすがフーバーさん。ワインへの強いこだわりとプライドが感じられますね。(吉澤)

―― ピノ・ノワールの華やかさがあるのに味はすごくミネラリー。じわっと旨みが広がるね。(安藤)

―― 色々試してみたんですけど、これ何にでも合いますね!鱧の旨味にブランドノワールのボディが調和しますし、梅肉にもジューシーな果実味がよく合う。薬味のミョウガや大葉とも香りのトーンと爽やかさが同調します!(金谷)

―― 日本料理無双だな(笑)〆の蛸と生姜の炊き込みご飯もバッチリだよ。でもみんな飲みすぎてもう足りないね…(安藤)

■ アイスワイン・ブラン・ド・ノワール 2018 / フリードリッヒ・ベッカー

―― キツネのラベルがチャーミングなベッカーさんの、高品質なアイスワイン。とろけるような甘みの中に、黒ぶどう由来のオレンジのような果実感とコクがほんのり感じられるチャーミングな味わいです。(宮本)

―― マンゴーとの相性がピカイチ!甘・酸・香り・テクスチャ、どれもがばっちり同調します。これは素晴らしい組み合わせですね。(加藤)

―― 甘みの強いフルーツが少し苦手でマンゴーは特に敬遠していたのですが、ベッカーの上品な甘みとマンゴーを合わせると甘みがきれいにとろけますね。驚きです!(石井)

―― ほどよい甘味と酸味、ピュアな味わいで美味しいです。フルーツ入りのパウンドケーキなどと合わせて、休日の午後から飲んだらもう最高ですね!(松丸)

この夏はドイツワインを楽しもう

魚に揚げ物、〆のご飯やフルーツまで、ドイツワインと日本料理の相性の良さを終始体感することができました!今回は1人1本以上のワインを飲んだのにもかかわらず、二日酔いにならなかったことが小さな驚き。アルコール度数がアイスワインで6%、辛口ワインでも12~13%代と低めだったからこそかもしれません。

今年の夏の食卓には、今回ご紹介した珠玉のドイツワインを選んでみませんか。日本料理との相性の良さをきっと実感できるはずです。それでは最後に皆さんで…ドイツワインに「ツンヴォール(乾杯)!」