蔵元紹介:長州酒造 天美

こんにちは!オンライン店の西村です。みなさんは山口県の「天美」はもうお飲みになりましたでしょうか。2019年11月に初リリースした商品は入荷後、瞬く間に完売。今、注目の日本酒なんです!まだ飲んだことがない、初めて名前を聞いたという方のために、長州酒造についてご紹介させていただきます(^^)/

かつて「菊川」という銘柄を下関の土地で醸していた児玉酒造。製造量減少に伴い、自社での製造を長く停止していましたが、長州産業株式会社が事業継承する形で長州酒造が誕生しました。


▲蔵元のある山口県下関市菊川町の風景


▲長州酒造の外観

杜氏には奈良、香川、三重の酒蔵でその手腕を発揮し注目を集めていた藤岡美樹氏が抜擢されました。藤岡氏は「菊川」銘柄の継承と共に、長州酒造で醸す新しい銘柄「天美(てんび)」を立ち上げます。

「天美」の名は、稲作と深い関わりのある日本古来の神「天照(あまてらす)」と、酒を意味する 「美禄」から1文字ずつとって命名。そのフレッシュさ溢れる女性らしい味わいは、今後新たな日本酒ファンを作ることができる銘柄として期待されています。

そんな今話題沸騰中の「天美」を醸す藤岡杜氏に、なんとお電話でインタビューをさせていただきました!

「微差は大差をうむ」を念頭にチームで醸す

――お忙しいところありがとうございます。まず、1日のスケジュールを教えて下さい。

今は週にタンク1本の仕込みを行うようスケジュールをたてています。
まず、朝6時から蔵での一日が始まります。朝は醪(もろみ)の櫂入れ、分析。あとは米を甑に張り込んで蒸します。お米が蒸し上がったら、酒母を仕込んだり、麹を仕込んだり。10時頃までにこのあたりの作業を終わらせて、午前中には片付けを終わらせます。

午後は、精米や麹の手入れを行っています。仕込みの間に、瓶詰め作業やラベル貼りなども行っています。立ち上げたばかりでまだ人数も少ないので、蔵人みんなですべての作業を行います。


▲原料処理機


▲もろみの様子

――すべてを蔵人のみなさんで行っているとのことですが、どのようなチームでお酒造りをされていますか?また、チームで取り組む上で大切にしていることはありますか?

蔵元立ち上げ直後は5名、今は増えて8名で造りを行っています。また酒業界経験者は2名のみですので、造りからラベル貼りまで蔵人全員がすべての仕事に携われるようにしています。そして、全員が案を出し合い、より良いものが作れるような環境を目指しています。経験者が2名だけということもあり、経験者では思いつかないような案も出たりしますよ。

チームで取り組むうえで大切にしていることは、「微差は大差をうむ」という言葉を常に念頭に入れることです。ひとりひとりが面倒だと思って手を抜いたりすると、少しのことでも後々に大きな影響になる…という考えです。逆に丁寧さを積み重ねることで、より良いお酒が造れるとも考えます。設備を増やしたりもして、今後もより丁寧に蔵人みんな同じ思いでお酒造りを行えるよう努めています。

――蔵人皆さんの丁寧さから天美のあの美味しさは生まれているんですね。


▲蔵人の皆さん

ゼロからの挑戦

――原料などのこだわりも感じますが、特別なものを使用しているんでしょうか。

原料は地元のものを使いたいと強く思っています。

まず、酒米は山口県産、ないしは瀬戸内産のお米をメインに使用しています。今は山口県産の酒造好適米である西都の雫と、山口県産の山田錦を使用しています。メインはこの2種類を使い、今後は愛山や雄町もスポット商品として使用していきたいと思っています。


▲洗米の様子

また、水は特にこだわりがあります。児玉酒造の時代から使っている井戸2本の井戸水を使っています。ただ、この井戸水の準備が一番大変だったんです。

5月から仕込み始めたんですが、水質が突然ダメになったんです。使っていない井戸は再度使うための復旧作業が大変で、井戸をきれいにしても水脈をきれいにしないといけないことを初めて知りました。コロナ禍になり蔵の試運転ができなくなって遅れてからの、この井戸のトラブル。24時間ポンプで水を組み上げて循環させて洗うを繰り返して、詰まりをなくしていく作業をしましたが、なかなか改善されず…この時ばかりは非常にきつかったです。

正直いうと、井戸水をあきらめて水道水を使うのかも考えました。でも、水道水は加工さているものだし、地産のものとよべるのか悩みました。地酒を作るときは地元のものを絶対に使いたかったので、この悩む時間も苦しく感じました。

ところがある日、突然つまりが取れたように水質が良くなって、数値も安定したんです。米とは違い水は持ってこれないので、水質の安定化するまでの半年くらいは本当にきつかったです。どの蔵にいても水があるのが当たり前だったし、こんな経験は初めてでした。天美のなめらかな口当たりもこの水のおかげですが、もう二度と井戸の復旧はしたくないですね!(笑)

――とても過酷の日々だったことがわかります・・・。天美をいま私たちが美味しくいただけているのは藤岡杜氏をはじめ蔵元みなさんの努力があってこそなんだと痛感致しました。

仕込み水もそうですが、新しい蔵ということもあり、新しいものの匂いも懸念していました。機械や搾りの袋など新しいものの匂いがあるんです。これがお酒についてしまわないように洗浄を徹底しました。新品であることを言い訳にしたくなかったので。これに関しても、準備を怠らずに行って本当に良かったと思っています。

――本当にゼロからのスタートなんですね。

そうなんです。ゼロから始めたので、自分たちらしい酒造りができるように本当に毎日が試行錯誤です。でも、それが楽しくて仕方がないんです!
どうやったら効率よく、そしてより良いものが造れるか。麹造りの方法を変えてみたり、甑の温度を変えてみたり…。「これをしたら凄く良くなった」とか「いや~、これは絶対に昨日の方がよかった」と、実験のように試すのが本当に楽しいんです。

特に今年の酒米は難しい性質なので、結果を見ては改善してを繰り返しています。


▲蒸米

――特別純米、純米吟醸を今現在定番で販売されておりますが、初年度の手応えをお伺いできますでしょうか。

初めてということなので、心配もあったのですが、お客様に手に取っていただき美味しいと言っていただけて奇跡が起きたように感じています。

――はせがわ酒店でも入荷するとあっという間に売り切れてしまいます!リピーターの方も多いですよ(^^)

本当にそういったお声が涙が出るほど嬉しいです!!

――そんな販売中の特別純米と純米吟醸ですが、「コレに合わせたら美味しかった!」という藤岡杜氏のオススメの食事はありますか。

開栓直後から1~2日ははガス感があるので、揚げ物などに合わせやすいと思います。軟水の仕込みなので通常だとガス残りにくいのですが、もろみ管理を丁寧に行い、ガス感が残るようにしています。
ガス感が落ち着いた後は、滑らかな口当たりなのでトマトソースやお寿司、鍋などにも合うと思います。カレーなどのスパイス系はちょっと難しいかもしれませんが…正直、両方とも何にでも合います!

人それぞれ好き嫌いはあると思うので、フレッシュなお酒が好きな方はガス感があるうちに、穏やかなお酒が好きな方は開栓から時間を置いて…好きなタイミング、好きな食事と併せていただけたらと思っています。
食事にも、飲み手にも優しく寄り添えるお酒。お客様の気持ちに寄り添い、その場が楽しくなるようなお酒でありたいと思っています。

――天美を飲んだ時、優しいイメージがあったのですが、藤岡杜氏の飲み手に寄り添う気持ちがお酒に出ていたのかもしれませんね♪

蔵元復活への熱い思い

それでは最後に、今チャレンジしていること、していきたいことはありますか?

実は個人的に壮大なテーマを持っているんです。蔵を生んでゼロから育てているので、蔵人もお客様もみんなが笑顔でいられる酒造りがしたいと思っています。
あとは、自分はあわてんぼうな性格なので、みんなのために安定して長く続くような体制を作っていきたいですね(笑)

――まるで蔵人みなさんのお母さんのようですね(笑)素晴らしいテーマだと思います!
仕込みシーズンのお忙しい中、お話をお伺いさせていただきありがとうございました。今後の天美に期待しています!

藤岡杜氏の暖かく、そして熱い思いで、これからもどんどん進化していきそうな「天美」。今後も目が離せない注目のお酒になりそうです。
皆さんも是非「天美」をお試しください♪