みむろ杉 木桶菩提もと~最古の清酒醸造手法「菩提もと」で醸す神秘的な日本酒~

こんにちは!オンライン店の西村です。突然ですが、皆さんは「菩提もと」という言葉をご存じでしょうか。

「菩提もと」とは、現代の一般的な仕込みとは異なる日本最古の清酒醸造手法のことなんだとか。その「菩提もと」で仕込んだことで注目を集めているのが2021年6月に発売された「みむろ杉 木桶菩提もと 2020酒造年度 西木桶-弐号」、2021年9月に販売開始の「みむろ杉 木桶菩提もと 2020酒造年度 東木桶-壱号」。

そこで「菩提もと」について詳しく知るべく、「みむろ杉」を醸す今西蔵主にお電話で直接お話をお伺いしました!


▲奈良県「今西酒造」14代当主・今西将之さん

奈良県にある今西酒造。「みむろ杉」を醸す蔵元です。お酒がお好きな皆さまなら一度は試されたことがあるんじゃないでしょうか。はせがわ酒店でも大変人気のお酒となっております♪

果たして「菩提もと」とは一体何なのか・・・早速質問してみました!

最古の醸造手法「菩提もと」とは

――今回、「菩提もと」で仕込まれたとのことですが、ずばり「菩提もと」とは何なのでしょうか?

まず奈良県の歴史から話しますね。僕たちの蔵のある奈良県・三輪には酒の神様を祀る日本最古の神社・大神神社があって、「酒の神が鎮まる地」とされています。また現代の酒造りの基礎となっている「酒母」の概念が奈良県にて確立されたこともあって、「清酒発祥の地」ともいわれています。その「酒母」こそが、「菩提もと」です。

「菩提もと」とは、室町時代中期に奈良県・正暦寺のお坊さんが経験と知恵だけで作り出した醸造手法なんです。自然のものだけで腐敗のリスクを極限まで落とした凄い手法なんです!


▲奈良県 三輪の風景


▲清酒発祥の地

――室町時代という生物学や化学が発達していない時代に生まれた醸造手法なんて凄いですね!どういった醸造手法なんでしょうか?

まずは、水に生米を入れて加温し、自然界の乳酸菌による乳酸発酵を行って、「そやし水」という乳酸水を製造します。その「そやし水」を酒母の仕込み水として利用することが特徴の造りとなっています。

「そやし水」の乳酸により、一般細菌の増殖を抑え、酵母の増殖を促し、アルコール発酵を行うという実に巧妙で合理的な醸造手法です。これは、速醸もとでいう乳酸にあたり、生もと系酒母の自然乳酸発酵にあたります。つまり、現代の日本酒造りの原型と言えるんです!

この造り方が生まれたことにより、醸造中の雑菌汚染を抑えることが出来ました。冷却機が無い時代でも夏場に安全にお酒を造ることができ、お酒の流通性と安全性が生まれました。

――今の日本酒造りは「菩提もと」が生まれたからこそあるんですね!

一番の特徴は「そやし水」

――「菩提もと」で今西酒造様は実際にお酒を仕込まれたと思うのですが、普段との違いはありましたでしょうか?

「菩提もと」という超自然派の造りを現代にアップデートした「みむろ杉 木桶菩提もと 2020酒造年度 西木桶-弐号」ですが、普段の仕込みと違う一番の点は、やはり「そやし水」の製造です。これが一番の特徴ですね。でも、このそやし水、めちゃめちゃ臭いんです・・・!(笑)普段の造りにはない酸っぱい香りがします!

あとは、このそやし水を用いた腐敗のリスクを極限まで落とした醸造手法とはいえど、速醸もとに比べるとリスクはあるため、臭みが出たり正しくない味にならないよう、いつも以上に衛生管理をしっかりと行ったり、普段の仕込みよりも濃糖の状態にして酵母の育成を促したり、雑菌汚染にはかなり気をつけました。

――そんなに酸っぱい香りがするんですね(笑)でも、そこから美味しい日本酒が生まれると思うとなんだか不思議ですね。


▲造りの風景


▲仕込中のもろみ

初挑戦の木桶仕込み

――今回は木桶仕込みの日本酒の様ですが、みむろ杉では初の試みですね

そうなんです。ステンレスの無い時代の造りを再現すべく、木桶を使用しました。発酵木桶は、三輪山の杉が移植されて、育てられた吉野山の吉野杉を用いています。杉の神が宿る土地・三輪でしか出来ない酒造りを目指して、また杉への敬意を込めて吉野杉を選びました。

吉野杉の良さは年輪が細かく密なこと。杉が狭い場所にたくさん植わっているので、年輪が密になります。また杉を人の手で育てているので、年輪が均一なんです。
その中でもより良い部分、つまり吉野杉の大トロ部分を厳選して木桶にしました。これによってお酒が漏れることのない、しっかりとした木桶となります。

ちなみに、商品名の「西木桶-弐号」というのは、「西・東とそれぞれ名付けた2本の木桶の内、西木桶で2回目に仕込んだ」という意味です。1回目は今熟成中なので、完成を楽しみにしていてください!

そして、2021年9月には「東木桶-壱号」も新たにシリーズに加わりました!今後、もう2本木桶を増やして、「東西南北」とそれぞれに名づける予定です。他の木桶で仕込んだものや熟成タイプなども展開していこうと考えています。


▲今西酒造 初めての木桶

――木桶も強いこだわりが感じられました。そして、熟成タイプや木桶ごとの違いでの商品展開、とても楽しみです!酒米に関しては使用するものは今後変わっていくのでしょうか?

お米についても、地元にこだわり奈良県産の自社田・契約栽培米のみを使用しています。今回の「みむろ杉 木桶菩提もと 2020酒造年度 西木桶-弐号」「みむろ杉 木桶菩提もと 2020酒造年度 東木桶-壱号」に使用しているのは山田錦なんですが、今後は奈良県の酒米「露葉風」にもチャレンジしてみたいと思っています。

――露葉風のタイプも是非試してみたいです!

「菩提もと」の今後の行く末

――2021年より菩提酛研究会が定義した醸造方法をクリアしていれば、「菩提もと」を名乗ることができるようになりました。今後、菩提もとのお酒は全国で増えていくと思いますか?

絶対に増えていくと思います!お酒に限らず、今は「安心・安全・無添加」という自然派、いわゆるナチュールがブームじゃないですか。「菩提もと」はまさに超自然派なお酒なので興味を持つ蔵元さんもお客様も多いと思うんです。

ただ、超自然派ワイン・ナチュールワインは流行らなかったんです。これは、正直いうと好みが分かれやすい味わいだったから、美味しくないと思ってしまった方がいたということです。確かに自然な造りで添加物もないという魅力はあると思うんですけど、美味しくなかったら意味がないんです。なので、僕たちは現代にアップデートした「美味しいナチュール」を造りたいと考えています。

――なるほど、これは「菩提もと」仕込みの日本酒の将来が楽しみです!

夢の実現

――最後に、今回「菩提もと」の仕込みを行って、何を感じたか教えていただけますか?

一つ一つに最高峰の物と時間をかけ、「清く、正しい、酒造り」という今西酒造の哲学に則って、自然派の清い造りで、正しい味わいのお酒に造り上げたのが「みむろ杉 木桶菩提もと 2020酒造年度 西木桶-弐号」です。先ほども話したとおり、自然の造りとはいえ、やっぱり美味しいものを届けたいという想いで仕込みました。

文化的なこの三輪の土地でだけ出来るお酒造りというのがずっと夢だったんですが、これが叶ったことが何より嬉しいですね。そして、普段の仕込みだけでは気づけなかった部分に「菩提もと」を仕込んだことで気づくこともできました。蔵の成長にも繋がり、本当にやってよかったと思ってます。

他の土地で菩提もとを造る蔵元が増えていくと思うけど、酒の神が鎮まる三輪の歴史、正暦時の菩提もとの歴史、吉野杉の歴史、今西酒造の歴史・・・この歴史の延長線上に存在するお酒というのは今西酒造だけにしか出来ない酒造りだと思います。今後も土地と文化に感謝をしながらお酒造りをしていきます!

――夢が実現したのが、この「菩提もと」のお酒なんですね。今西酒造のお酒づくりに対する熱い想いを感じることができました。今後の展開に期待していいます!

お忙しい中、お時間をいただきまして本当にありがとうございます。今西蔵主の熱い思いが電話越しにもヒシヒシと伝わってきました!

今後シリーズ化していく「みむろ杉 木桶菩提もと」。これは今後の展開に目が離せません! そんな、熱い想いがこもった「みむろ杉 木桶菩提もと」シリーズは、現在はせがわ酒店オンラインショップにて販売中です♪

是非皆さん注目のみむろ杉をお試しください(^^)/